武豊町制65周年記念事業

武豊町制65周年記念事業

吉川真はやぶさ2ミッションマネジャーと籾山芳輝武豊町長による「ねじ込み式」

武豊町の歴史は、日本の宇宙開発の歴史とともに

名古屋市の南部、知多半島の中央部に位置する武豊町は、2019年度で町制65周年を迎えました。武豊町ではそれを記念するイベントを町民から募集。NPO法人ギガスターが応募した「『はやぶさ』まるごと体験inたけとよ」が採択されました。

武豊町が町制を施行した1954年は、東京大学生産技術研究所の糸川英夫博士が、戦後の日本における初の実験用ロケットである「ペンシルロケット」の開発をスタートした年にあたります。翌年の1955年には国分寺での水平発射実験が成功し、日本のロケット開発の幕開けとなりました。

日本のロケット開発に詳しい方はご存知かもしれませんが、武豊町内には「ペンシルロケット」の時から一貫して日本のロケットの個体推進剤を供給している日油株式会社(当時は日本油脂株式会社)があり、宇宙開発にゆかりのある地域です。初代はやぶさが打ち上げられたM-Vロケットも、武豊町から船で内之浦まで運ばれたということです。

また驚くべきことに、記念イベントの開催拠点である武豊町民会館「ゆめたろうプラザ」には、ペンシルロケットの実機が展示されています。これは晩年の糸川博士と交流があった町民が、博士から寄贈されたもので、「知る人ぞ知る」とはまさにこのことですね。

武豊町の歴史は日本の宇宙開発の歴史とともにあります。これは武豊町民の一人として誇りでもあります。そうした思いを込めて、武豊町制65周年記念事業に「はやぶさ」関連の事業を提案させていただきました。

武豊町民会館「ゆめたろうプラザ」
(ウィキペディアより)
ペンシルロケット
(提供:久米洋典氏)

「芸術と科学のハーモニー」をコンセプトとしたイベントを提案

「ゆめたろうプラザ」は「芸術と科学のハーモニー」というテーマを持つ施設で、年間を通して芸術分野、サイエンス分野双方の事業が行われています。そこで今回のイベントでは、講演会という「科学」からのアプローチと、演劇という「芸術」からのアプローチでイベントを提案しました。

講演は、はやぶさ2のインパクターの各種開発実験をご担当された日本工機株式会社の村田健司さんにお願いしました。また演劇は 「ゆめたろうプラザ」で活動している町民劇団TAKE TO YOUの皆さんにご協力いただきました。

2019年6月16日、武豊町民会館「ゆめたろうプラザ」の輝きホールにおいて、武豊町企画政策課とNPO法人ギガスターの主催による記念イベントが開催され、多くの住民が、武豊町制65周年を祝うとともに、日本の宇宙開発の65年の歴史について学ぶ機会となりました。

記念イベントのチラシ(A4二つ折りの表紙と裏表紙)
記念イベントのチラシ(見開きページ。プログラムの紹介)

もうひとつのはやぶさストーリー「MUSES(ミューゼス) 新米女神と挑戦者たちの物語」

今回の演劇に向けて、工学実験衛星MUSES-C「はやぶさ」の挑戦を、芸術と科学の女神「MUSES(ミューゼス)」の視点で描く1時間ほどの作品を創作しました。

協力していただいた町民劇団TAKE TOU YOU は、女性が中心の劇団で、男性の開発者が多い宇宙開発の劇を創作するのが難しく、思い切って「はやぶさ」のコードネームが「MUSES-C」であったことから「そうだ女神のお話にしよう!」ということで、以下の「あらすじ」にありますようなファンタジー作品に仕上げました。

劇中では、2011年に武豊町で製作された「はやぶさ実物大模型たけとよモデル」が登場するとともに、エンディングには「はやぶさ2実物大模型たけとよモデル」が舞台上空から舞い降りてタッチダウンする演出が披露されるなど、涙あり笑いありサプライズありの作品となりました。

今回、素人が作った原作・脚本は 劇団の指導をされている「やとみまたはち」さんによって素晴らしい作品に生まれ変わりました。そして人間の役者さんが演じるからこそ生まれる挑戦者たちのメッセージが、見る人の心に伝わりました。舞台上の実物大模型は 舞台監督、照明、音響のプロの皆さんの力で 生き生きと輝き、通常の展示とは違う姿で人々に感動を与えてくれました。

私は、「これぞ『芸術 』 の力だ!」と感じました。

「はやぶさ実物大模型」と「はやぶさ2実物大模型」が舞台上で共演するのは、おそらくこれで最初で最後の機会になろうかと思います。このような機会をいただいた武豊町ならびにご協力いただいた皆様に心より感謝いたします。

あらすじ

天上界に女神派遣会社がある。この会社は歴代の科学者に「芸術と科学の女神、MUSES(ミューゼス)」を派遣してきた老舗であった。科学者に寄り添いながら自然に閃きを促すことがMUSESの仕事で、古くはダビンチやニュートンの発見にも一役買ってきた。日本の宇宙航空研究開発機構JAXXの管制室で「はやぶさ」に指令を送るコマンダーをしている新味米香は実は新米のMUSESだった。人間社会に紛れ込んで人間として職務を全うしていたが、ある日「はやぶさ」に思いもよらず危機が訪れる。
人間としてこの危機を乗り切るか、禁断の女神の力を使うか悩む米香。
彼女の、人間たちの、そして「はやぶさ」の運命はいかに・・・・

CAST & STAFF

<CAST>
新味米香(山中里穂)   新米MUSES(姿勢制御開発担当、後にコマンダー担当)
糸山栄吉(中山真人)   リーダー(イオンエンジン開発担当)
下村端男(山下大樹)   主任(サンプラー開発担当)
田村真理(森田紗由美)  先輩(帰還カプセル開発担当)
磯山(安田萌)      秘書
アウロラ(高木幸江)   ボス女神
イシュタル(土田美奈子) ニュートン担当女神
ウェヌス(井上かおる)  ダビンチ担当女神
オースタラ(中野栄美)  JAXX担当女神(産休で新米にバトンタッチ)
カーリー(土平優子)   NASA担当女神
記者A(榊原美鈴)
記者B(間瀬望砂規)
<STAFF>
原作・脚本:間瀬康文(NPO法人ギガスター)
脚本補作・演出・音楽:やとみまたはち(劇団アルクシアター)
出演:武豊町民劇団TAKE TO YOU
舞台監督:井上和也
音響:加藤久直
照明:村瀬満寿夫
衣装:塩谷蓮華(町民劇団TAKE TO YOU)

「はやぶさ実物大模型武豊モデル」を大道具として活用
劇のフィナーレには、頭上から「はやぶさ2実物大模型たけとよモデル」が舞い降りて、タッチダウン!
終演後、2台の模型を前に関係者で記念撮影

ご希望の方には地元のケーブルテレビで放映された収録DVDをお貸しいたします。ご希望の方は、NPO法人ギガスター(info@gigastar.jp)までご連絡ください。

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